Think It Over (Some)/Think It Over (Some More)

ご無沙汰しております。

ご無沙汰しているうちに夏になりました。ボンヤリしているようでまあいろいろ思うところはあるのですが、それを敢えてここに書かない俺の奥ゆかしさ。あるいは怠惰。

そういえば最寄駅の階段に寝泊まりしている婆さん(または爺さん)がいる。季節を問わずいろいろ着込み、フードまで被って重武装しているので顔も分からない。ので仮に婆さんとする。もしくは性別を超越したサムシングとする。しかしこの人を初めて目にしてからもう3年は経つだろうか。終電を降りて地下鉄の階段を上がっていくと、いつも階段の一番上から4段を使って寝ている。
あしたのジョー2』の冒頭、力石徹を殺してより放浪していた矢吹丈。地下鉄の階段の踊り場で寝ようと思ったらルンペンの先客がいたのでチェッ、という場面があったけれども、まあおそらく普通は踊り場を使うと思うんですね。雨風をしのいで寝ようと思ったら。割とリーズナブルな選択といえる。ところがこの婆さんはそうじゃなくて、階段の上から4段めに座り、その上3段に仰向けにもたれる形で寝ている。たまに階段に腰掛けて、傍のキャリーバッグから何か出して食っている。そういう様子なんかを見るとちょっと安心するが、しかしだいたい座ったまま上体を極端に斜めにして寝ている。
徹夜仕事の途中で椅子に座って寝てしまった、そういう時でさえ目が覚めたら首や背中や腰が痛いわダルいわ、しょうがないからそのへんで横になって寝直しますね。それがコンクリートの階段に背中をもたれて、腕を組んで寝ていると。少なくとも3年はそういう状態だと。どういう拷問だ。そんなことやってたら背骨がガタガタになるんじゃないか。背中やら腰やら痛くないんだろうか。えらく蒸し暑いのにジャンパーかなんか着ている。厚着していると背中がゴリゴリするのが多少緩和されるのだろうか。でも超蒸し暑いよ今日!ということでいつもこの婆さんが気になるわけです。とはいえ何か俺にできることがあるかといえば正直言って特にない。偽善者だなあ。と、ほぼ毎晩思いながら帰途に着いていた。
先日いつものように終電を降りて階段を上がって行ったら婆さんは起きており、前屈みになって腰をトントン叩いていた。やっぱり腰に来てるんじゃねえか。と思いながら俺は多少安心した。なぜ安心したのかは分からない。背中や腰が痛いのも気にならんほど、婆さんがもはや人間を超越した存在になってしまっているのではないか。そういう想像が間違いだったことに安堵したのかもしれない。そんなことをボンヤリ思うと同時に、ていうかもうちょっと寝やすい場所だってあるんじゃないか……と改めて思うのだった。

しかしなぜこんな話をここに書いているのかはよく分かりません!暑い!寝よう!